緑内障という病気を聞いたことがありますか?
目の代表的な病気の一つなので、聞いたことがあったり周りにもこの病気の方がおられるかもしれませんね。
緑内障は何年も何十年もかけてゆっくりと視野が欠けて狭くなってくる病気です。そして気がつかない間にどんどん進行し、最終的には失明に至ることもあります。
40歳以上の方の20人に1人くらいの割合で見られる病気なので、珍しい病気ではないと思いますし、実際、日本人の中途失明の原因の中では最も多い病気です。

では実際に緑内障と診断された方が失明に至る確率はどのくらいなのでしょう?
少し古いデータになりますが2014年のアメリカ眼科学会での報告によると、1965年から1980年には緑内障の患者で失明に至った方の割合は25.8%でしたが、1981年から2000年の間には13.5%と約半分に減少しています。
これは、緑内障の進行を抑えるのに有効な点眼薬や、より効果的な手術法の進歩、精密な視野検査など早期に診断可能な検査機器の開発のおかげかと思われます。

失明率が半減しているといっても、やはり失明に至る方は現在でもおられます。
ではなぜそこまで症状が進まないと気づかないのでしょう?そこには主に3つの理由があります。
まず一つ目は、緑内障自体が何年も何十年もかけてゆっくりと進行するために変化に気づきにくい病気であることが挙げられます。そして二つ目は、両目で見ているために片目が見えにくくなってきても、もう片方の目がそれを補うように働くために気づきにくいということも挙げられます。そして三つ目の一番厄介な理由が、人間の脳の機能が良すぎて、視野が欠けてきても、欠けた部分がいかにも見えているように錯覚させてしまうということが挙げられます。

検査・診察をし、患者様に「緑内障のために視野が狭くなってきています」とお話しした際に、必ずみなさん「いや、ちゃんと見えてますよ。視野は欠けていませんよ」とおっしゃいます。
視野が狭くなっているとお話ししたときにみなさんがイメージされるのは、視野の中や端の方が黒く抜けてきて見えにくい部分が出てくるといったものだと思います。実際に緑内障の説明用の資料を見てみても、イメージ図としてそのように説明しているものも多いです。実はこれが間違っています。
緑内障で視野が欠けてきて見えない部分が出てきたとしても、人間の脳はその見えない部分を、周りの視野の景色の情報を使ってあたかも見えているかのように勝手に像を作り出して、視野の欠けている部分を無くしてしまうのです。信じられないような話ですが実はみなさんは普段から無意識のうちに自覚しているのです。
人間の目の視野の中には必ずマリオット盲点という視野が欠けて見えない部分があります。片目でまっすぐ正面をみた時の視界の中で、視点の少し外側(耳側)になります。その視野の欠けている部分にみなさんは普段の生活の中で気付いたことはありますか?ほとんどの方はないと思います。
それは先ほどお話した通り、見えていない部分を脳が見えているかのように補正しているからです。脳が視野の欠けを補正するために、何となく見えているような見えにくいようなよくわからない状態でゆっくり視野の欠けが進行し、いよいよ脳が補正できないほどに視野の欠けが大きくなって初めて自分が見えていないことに気づきます。急いで眼科を受診してみると、視野の欠けが広すぎてすでに失明の一歩手前だとわかるのです。

現在緑内障で通院している方で緑内障が見つかったきっかけを調べた調査があります。
その調査によると、自覚症状で見つかった方は18.3%、定期健康診断や別の病気で受診した際にたまたま見つかったという方は79.1%ということで、これらのことを考えると、おそらく自覚症状で緑内障が見つかった場合には、その段階でかなり視野は狭くなっており、最終的に失明に至るリスクが高い可能性があると思われ、自覚症状がない状態で見つけることができれば失明に至るリスクは少ないと言えるのではないかと思っています。

緑内障で一番厄介なことは、今の医学では改善させることができないということです。
何も病気がない健康な方でも、年齢と共に必ず視野は少しづつ狭くなってきます。緑内障の方も同様に病気の進行がなくても少しづつ狭くなるのですが、そのスピードは病気がない方以上に早いと言われています。
つまり、緑内障がものすごく進行してしまっていて視野が非常に狭い段階で見つかった方は、どれだけ治療がうまくいっていても、視野がなくなり失明に至る可能性が高いと思われますし、視野の欠けが少ない状態で見つかった方は、治療で安定していたら今後も日常の中で視野の狭さに気づくことなく普通に生活していくことができると言えます。
つまり、どれだけ早い段階で緑内障を見つけ、早い段階で治療を開始することができるかということが大切になってきます。

最初にお話したとおり、緑内障は40歳以上の20人に1人に発症すると言われています。
しかも自覚症状に気付きにくく、気づいた時には将来失明に至る可能性がある所まで進んでいることもありうる病気です。
これを読んでいただき、症状はなくても検査のために眼科を受診してみようと思っていただけるとすごく嬉しいです。
次回は緑内障の検査についてお話したいと思います。